一緒に見れば彼女がモータースポーツ好きになる!映画「Over Drive」
車・レース・モータースポーツが好きだが、彼女は全然興味ない、というモタスポファンは多いだろう。
今回は、そんなモタスポ野郎が、彼女と一緒に観るのにうってつけの映画をご紹介する。
大ヒットシリーズ「海猿」を手掛けた羽住英一郎監督、2018年6月に東宝の配給で全国の映画館で公開された映画「Over Drive(オーバードライブ)」だ。
なおこの記事は、ネタバレとなる内容は極力含まず、映画の期待を高める方向で書いているので、映画を未視聴の方も安心してお読みいただきたい。
- Over Driveは今までにないモタスポ映画
- Over Driveのあらすじ
- 旬の役者を多数起用したOver Driveのキャスト
- Over Driveの監督 羽住英一郎氏
- Over Driveのここがすごい!
- 「Over Drive」は彼女と一緒に観よう!
- Over Driveでラリー人気の向上に期待!
Over Driveは今までにないモタスポ映画
↑YouTube Over Drive 予告編
これまでモータースポーツを題材にした映画は、モタスポファンでなければ楽しめないようなものが多かった。
マニアが大喜びするような、実際のレースを取材した、ドキュメンタリータッチの作品が主流だったのだ。
そのような映画はレースについての詳しい知識を持っていないと、内容を退屈に感じてしまったり、またそもそも観に行こうと思わない。
そんな中、2013年公開のロン・ハワード作品「RUSH プライドと友情」は、モタスポ映画に新風を吹き込んだ。
1970年代F1の二人のチャンピオン、ニキ・ラウダとジェームス・ハントの死闘を描いた物語を、人気監督・人気俳優によって映画化、一般大衆も楽しめる娯楽映画として人気を博した。
しかしこの「RUSH」も、F1を知らない人がはじめて見ると、『カーレースは怖い、危険だ!』という印象を植え付けてしまいかねない、恐ろしいシーンが含まれおり、万人受けするとは言えない。
そこへきてこの「Over Drive」は、モタスポファンのみならず、誰もがドキドキ・ワクワクしながら見られるようなエンターテインメント性の強い作品になっている*1。
私は最初、この映画が国内ラリー選手権という、現実の世界では地味な競技を題材にしている事を知って、『またモタスポ好きのための映画か?』と思った。
ところがどっこい。
実際視聴してみると、ラリーはあくまで題材であって、映画ならではの大胆なアレンジが加えられ、現実のラリーの地味な印象をすっかり払拭している。
『ラリーって何?』というような家族や恋人と一緒に、安心して見られるモタスポ映画なのだ。
Over Driveのあらすじ
私は事前の予習なしに、とにかく観始めたのだが、物語はスピード感をもって痛快に進み、104分をあっという間に駆け抜け、WANIMAが歌う爽快なテーマ曲”Drive"が流れるエンディングへとたどり着いた。
この映画の舞台は、全日本ラリー選手権をモデルにした架空の「SCRS(セイコーカップラリーシリーズ)」という選手権。
そのラリー選手権に参戦する「スピカレーシング」の若きドライバーと、彼の兄でもあるチーフメカニックとのぶつかり合い、ライバルチームとの闘い、ヒロインである主人公のマネージャーとの絡みを軸に物語は展開する。
とはいえ、ストーリーは複雑ではなく、単純明快なスポコンもの。
単なる車の話ではなく、適度なヒューマンドラマが含まれており、見ごたえ十分だ。
旬の役者を多数起用したOver Driveのキャスト
「Over Drive」は単なるモタスポ映画ではなく、車に興味のない一般の人もタレント目当てで観たくなるような、今が旬のキャストを揃えている。
TVに出ない、なじみのない役者ばかり…というこれまでのモタスポ映画の常識を覆す、この映画に登場する、今が旬の若手イケメンアイドルをご紹介しよう。
東出昌大(ひがしで まさひろ)
画像情報:WIKIMEDIA COMMONS
スピカのチーフメカニック、そしてドライバー檜山直純の兄である、この映画の主人公檜山篤洋役。
1988年生まれ、若い頃はメンズノンノ専属モデルオーディショングランプリや、パリコレ出演歴のあるファッションモデルとして活躍。
2012年、映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。
以来、NHKの朝の連続テレビ小説に出演するなど、多数のドラマ・映画に出演。
2015年には渡辺謙の娘、杏との結婚で話題となった。
主な出演作:
映画
『桐島、部活やめるってよ』
クローズEXPLODE
寄生獣
ドラマ
NHK朝の連続テレビ小説 あまちゃん ごちそうさん
さよならドビュッシー 〜ピアニスト探偵 岬洋介〜
デスノート NEW GENERATION
新田真剣佑(あらた まっけんゆう)
スピカのドライバー 檜山直純役。
公式には、兄の篤洋が主役となっているようだが、私はこの映画は、直純は篤洋と共にWキャストだと思う。
1996年生まれ、俳優 千葉真一の息子。
幼少の頃より映画の本場、アメリカ・ハリウッドで暮らし、現地の映画に出演。
その成果で、劇中でも流ちょうな英語を披露している。
2017年、『ちはやふる -上の句- / -下の句-』で、第40回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞し話題となる。
主な出演作:
映画
ちはやふるシリーズ
にがくてあまい
チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜
ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章
ドラマ
世にも奇妙な物語
仰げば尊し
トドメの接吻
森川 葵(もりかわ あおい)
本作のヒロイン、スピカのドライバー 檜山直純のマネージャー、遠藤ひかる役。
ファッション雑誌「Seventeen」の専属モデルオーディション「ミスセブンティーン」でデビュー。
2015年「テディ・ゴー!」で連ドラ初主演、以来多数の映画・ドラマ・TVCMに出演。
2018年11月上演の舞台『ロミオとジュリエット』では、初舞台にして主演のジュリエット役を演じる。
主な出演作:
映画
おんなのこきらい
TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ
恋と嘘
嘘八百
ドラマ
テディ・ゴー!
プリンセスメゾン
賭ケグルイ
明日の君がもっと好き
その他出演者
北村匠海:ライバルチーム、シグマレーシングのドライバー、新海彰役。
町田啓太:スピカレーシングのメカニック、増田順平役。
要潤:遠藤ひかるの上司、香川久俊役。
吉田鋼太郎:スピカレーシングの代表、築地一星役。
Over Driveの監督 羽住英一郎氏
映画を見終わった私はそのクオリティの高さに驚いたが、この映画のメガホンをとったのは、あの、羽住英一郎監督だと知って、道理で、納得。
あまりにも有名な「海猿」
羽住監督といえば「海猿」シリーズがあまりにも有名だ。
海難救助に携わる潜水士の、極限状態での活躍を描いたこの作品は、伊藤英明の主演により国民的大ヒットを記録。
2004年の第一作以来、LIMIT OF LOVE 海猿(2006年)、THE LAST MESSAGE 海猿(2010年)、BRAVE HEARTS 海猿(2012年)と続く4部作が制作された。
他にも「暗殺教室」や、「MOZU」など、映画・TVドラマを多数制作している。
実は熱心なモタスポファン
そんな羽住監督が『海猿を超える作品を目指し』て制作したというのがこの「Over Drive」。
実は羽住監督は小学生時代から熱心なモタスポファンだったとの事で、本作の映画化は長年の念願かなってのものだったという。
マイナー競技である自動車ラリーという題材が、同様に海上保安官・潜水士というマイナーな題材から大ヒット作「海猿」を生み出した羽住監督の手によって、いかに誰もが楽しめるエンターテインメントに描きあげられているのか、注目だ。
Over Driveのここがすごい!
キャスト・有名監督以外にも、まだまだある「Over Drive」の魅力をご紹介しよう。
豪華! Over Driveの協力企業
「Over Drive」には自動車、パーツ、タイヤ、時計、ラリー雑誌などラリーに関わっている実在の企業が多く協力しており、劇中にも実際の企業名が登場する。
例を挙げると、
- Pioneer(スピカレーシングのスポンサー)
- SEIKO(架空のラリー選手権、SCRSの冠スポンサー)
- TOYOTA(スピカレーシングが使用する車両 YARISのメーカー)
- WORK(スピカレーシングが使用しているホイールメーカー)
- Fujitsubo(スピカレーシングが使用しているマフラー)
- momo(スピカレーシングが使用しているステアリングホイール)
- OMP(スピカレーシングのドライバーが装着しているレーシングスーツ)
などなど、他にも数え上げればキリがない、モタスポファンの心をくすぐる実在のロゴが登場、それらのひとつひとつを見つけながら観るのも楽しみだ。
リアリティの追及
「海猿」を超える極限の世界を描くため羽住監督は、チーフメカニックの篤洋を演じた東出に、撮影の2カ月前から車の構造を解説した分厚い資料を勉強させ、メカニックの仕事も体験させたという。
この映画の見どころである、制限時間内での整備の場面は、現役の有名ラリーメカニックの監督・訓練のもと、本物のラリー車両を使って撮影されたため、大変緊迫感のあるものに仕上がっている。
画像情報:WIKIMEDIA COMMONS
またドライバーの直純役を演じた新田に監督は”目に見えて鍛え上げられた肉体”を要求。
その要求に見事に応えた新田の肉体美に、女性ファンから「非常に目の保養になりました(笑)」との映画レビューも。
現役の全日本ラリー選手権王者が担当したラリーカーの豪快なドライブ場面も必見だ。
夢のラリーシリーズ「SCRS」
「Over Drive」に登場する架空のラリー選手権、「SCRS」。
時計メーカーのセイコーが冠スポンサーのこのシリーズは、ラリーファン、いやモータースポーツファンの願望というか、夢をそのまま描いたものだ。
アジアの海外2か国を含む年間13戦が組まれたシリーズ、大都会のど真ん中で公道を封鎖し、30年以上昔のWRCのように観客スレスレをマシンが通過するコース。
選手達はマスコミに大々的に取り上げられ、アイドルのように大人気で、大会のたびに大観衆が集まり、公道レースではベランダから大勢の一般人が観戦している。
モタスポファンはツッコミを入れずに楽しもう!
とはいえ、それはこの映画の中だけの演出であって、現実には国内ラリー選手権、いや世界選手権のWRCですらこんなに華やかではない。
ラリーに限らず、日本の都市部で公道を封鎖しての競技なんて、夢のまた夢だ。
実はこの映画の演出は、他にも、モータースポーツを知っている人からしたら『ありえねぇよ!』というツッコミどころ満載だったりする。
しかしそこは『モータースポーツに関心がないカップルが見ても楽しめる青春映画に仕立てた』という監督のコンセプト通り、あえてツッコまないのが正解。
いつか日本のラリーやモータースポーツ界が文化と市民権を得、この映画の中で描かれているような素晴らしい盛り上がりを見せて欲しい! という、羽住監督や原作者・作り手の願いがこもっている、と私は思う。
モタスポファンの我々からすると『え?』と思うような場面も、エンターテインメントとしてただ、楽しんでみよう。
「Over Drive」は彼女と一緒に観よう!
画像情報:ぱたくそ
今まで数知れないモタスポ野郎が、F1やレースの映画を彼女に見せて、途中で『つまんない!』と言われてきた事だろう。
しかしこの「Over Drive」は、モタスポに興味のない彼女に『絶対楽しいから!』と約束出来る映画だ。
何より羽住監督自身が『マニアックな内容では共感を得られない。セリフに専門用語を使わず、余計な説明も加えない。モータースポーツに関心がないカップルが見ても楽しめる青春映画に仕立てた』と言っているのだから。
ラリーを知らない人も楽しめるよう、劇中では車のパーツや、ラリーの進行についての説明がさりげなくされている。
あ、もちろん、女性がひとりで、東出・新田ら、イケメン出演陣の肉体美を堪能するために観るのもアリ。
とにかくカッコイイ男たちの、決して諦めない闘いがみられる、スカッと爽快なスポコン映画だ。
Over Driveを見る前に知っておきたいラリーの知識
画像情報:Pixabay
一般向きの映画とはいえ、映画を見る前にラリーについて少しだけ知っておくと 、何倍も楽しめる。
レースとの違い
サーキット(周回路)を多数の車が同時に、何周も走行するレースと異なり、一般道に設定されたSSと呼ばれる長いコースを、1台ずつ走行し、そのタイムの合計で順位を決めるのがラリー。
また、同じコースを何十周も周回するレースは一人乗車で戦うが、ラリーはブラインドカーブや一歩間違えれば転落というような危険なコースを長く走る為、コ・ドライバーと言われる選手が助手席に乗車し、コースの状況をドライバーへ伝える大切な役割を担う。
タイムアタックの前に「レッキ」と呼ばれる事前試走があり、ここでコースの形状や特徴を示す「ペースノート」を作るのがコ・ドライバーの仕事。
そして本番では助手席のコ・ドライバーが読み上げるペースノートを頼りに、ドライバーはタイムアタックを行うのだ。
↑コ・ドライバー同乗でのWRCのラリー走行
全日本ラリー選手権は、基本的に土日の2日間を使って行われ*2約20カ所に及ぶSSを順番に走行する。
Over Driveに登場する架空の選手権SCRSは、3日間のスケジュールが組まれている。
各大会では順位に応じてチームにポイントが与えられ、年間13戦で獲得したポイントの合計で総合チャンピオンが決まるのである。
整備に時間制限がある
↑「Over Drive」に全面協力しているToyota Gazoo Racingの車両整備プロモクリップ
劇中の見せ場である整備の場面。
激しいオフロード走行でマシンは傷付き、ボロボロになって帰ってくるが、レースとは異なり、車両整備には制限時間が課されるのだ。
制限時間は大会により異なるが、WRCの場合、通常は朝のスタート前に15分、日中に30分、そして夜に45分と合計たったの1時間半しかない!
制限時間をオーバーすると、ペナルティが課され、順位を大きく下げてしまう。
どのチームも同じ制限時間が課されるため、より短い時間で高度な修復作業が出来るかが、チーム総合力の差となる。
劇中で篤洋率いるスピカのクルーが、ボロボロに傷付いたマシンを驚きの早さで走行可能な状態に修復する場面が何度も登場するが、これは決して映画の中だけの過剰演出ではない。
実際のラリーでは、足回り交換をわずか15分程度で済ませてしまうというのだから、本当にすごい世界だ。
ラリーおたくへひとこと注意
画像情報:pxhere
こうした知識を、映画を見ながら彼女に教えてあげると、彼女はさらにモタスポに興味を持つかもしれない。
ただし、知っているばかりに伝えすぎに注意!
聞かれていないのに知識をベラベラ話して、ウザがられないようにしよう。
ちなみに私は嫁と一緒に視聴したが、嫁の方から次々とラリーのルールについて聞いてこられ、実はラリーにあまり詳しくない私はタジタジだった。
映画を観終わった後、この記事を書くにあたってラリーについて改めて勉強したのは言うまでもない…
車が特別好きではないウチの嫁だが、この映画は存分に楽んだと言ってくれ、私の目論見は大成功だった。
近い将来、嫁と一緒にラリー観戦に行けそうだ。
Over Driveでラリー人気の向上に期待!
WRC北海道が開催されなくなって久しい、日本のラリー界。
陰りが見えるのはラリーだけではない、日本のモータースポーツ界全体に、’90年前後のバブル期のような活気がずっと戻らない。
ル・マンで日本人がトヨタに乗って優勝しても、佐藤琢磨がインディ500を制しても、モータースポーツの知名度は依然として向上しない。
しかし、この映画でそんな日本のラリーが、モータースポーツ人気が、少しでも盛り上がって欲しい。
熱心なファンを満足させるマニアックな映画だけでなく、この映画のように普通の人をモタスポに振り向かせる作品も、どんどん増えて欲しいと思う。